布団に入るとすぐにかゆくて眠れない、指の間や手首、腰まわりに小さな赤いブツブツが出て、同居する家族までかき始めた。そんなときは「疥癬(かいせん)」の可能性を考える必要があります。疥癬はヒゼンダニが皮膚の表面に寄生して起こる、人にうつる皮膚の病気で、年齢や衛生習慣に関係なく誰でも感染する可能性があり、高齢者施設や寮、家庭内で次々に広がりやすい特徴があります。
疥癬は医師が診断を確認したうえで処方薬による治療が必要で、同居家族や濃厚接触者も多くの場合は同時に対応し、寝具や衣類の洗濯を組み合わせることで再感染を減らします。かゆみ止めの塗り薬だけで症状を抑えていると、診断が遅れ、さらに多くの人にうつってしまうおそれがあります。
要点:疥癬はヒゼンダニが皮膚の表面にもぐり込んで起こる、人にうつる皮膚の病気です。典型的なのは夜に強くなる激しいかゆみで、指の間、手首、腰まわり、わき、陰部に小さなブツブツや細い線状のトンネル(疥癬トンネル)がみられ、同居する家族も一緒にかゆくなることがよくあります。主に長時間の肌と肌の接触でうつります。治療は医師の確定診断のうえで処方薬を使い、家族や濃厚接触者も同時に対応し、寝具や衣類を洗濯します。治療後もしばらくかゆみが残ることがあり、数週間続く場合や新しい発疹が出た場合は再受診してください。
疥癬とは?なぜこれほどかゆいの?
疥癬は、ヒトに寄生するヒゼンダニが皮膚に感染して起こる病気です。メスのダニはとても小さく肉眼ではほとんど見えません。皮膚のいちばん外側の層にもぐり込んで細いトンネルを掘り、その中に卵を産み、ふ化した幼虫がさらに増えていきます。
疥癬の激しいかゆみは、主にダニや卵、フンに対する体のアレルギー反応によるものです。そのため初めて感染した場合は、接触から数週間たってからはっきりかゆくなることが多く、この間は症状がなくても他の人にうつす可能性があります。以前に感染したことがある人が再び感染すると、数日以内に症状が出ることがあります。
ヒゼンダニは人の体を離れると通常2〜3日ほどしか生きられないため、疥癬は主に「人から人へ」うつるもので、環境が不潔だから自然に発生するものではありません。個人の衛生状態とは直接関係がないので、自分を責める必要はありません。
疥癬はどうやってうつる?感染しやすいのはどんな人?
疥癬の主な感染経路は、患者さんとの長時間で直接的な肌の接触です。たとえば同じ布団で寝る、体の介助をする、親密な接触、長時間手をつないだり抱き合ったりすることなどです。短い握手やすれ違う程度では、うつる可能性は比較的低いとされています。
まれに、使ったばかりの衣類、タオル、シーツ、布団の共用でうつることもあります。次のような人や環境では集団発生が起こりやすくなります。
- 高齢者施設、介護施設、長期療養施設の入所者と介護スタッフ。
- 寮、兵舎、矯正施設など人が密集して共同生活する環境。
- 保育園、幼稚園、乳幼児のいる家庭。
- 寝たきり、免疫力が弱い、体が不自由、かゆみを伝えにくい高齢者。
- 家族にすでに疥癬と診断された人がいる場合の同居家族やパートナー。
家庭や施設で同時に複数の人が夜間の強いかゆみを訴えている場合は、医師にそのことを伝え、施設の感染対策担当者とも相談してください。一人ずつ対応するより、まとめて対応したほうが抑えやすくなります。
疥癬の症状は?よく出る部位の見分け方は?

疥癬の現れ方は、年齢や免疫の状態、すでに自分で薬を塗っているかどうかで変わります。以下は医師がよく確認するポイントですが、見た目だけで自己判断すると間違えやすいため、医師の評価が必要です。
夜や熱いお風呂のあとに特にかゆい
強いかゆみは最もよくみられる症状で、夜に布団に入ったとき、体が温まったとき、熱いお風呂のあとに強くなりやすく、ひどい場合は睡眠に影響します。同居家族にも同じような夜のかゆみがあれば、重要な手がかりになります。
指の間・手首・腰まわりなどの典型的な部位
大人では指の間、手首の内側、ひじ、わき、ベルトのあたり、おへそ、お尻、太ももの内側、乳輪、男性の陰部によくみられ、陰のうや陰茎の赤いしこり(結節)は特に疥癬を疑う手がかりになります。大人では顔や頭皮には比較的出にくいとされています。
小さなブツブツ・水ぶくれ・細い線状のトンネル
皮膚には小さな赤いブツブツや小さな水ぶくれがみられ、ときに灰白色で短く曲がった細い線状のトンネルが指の間や手首に見えることがあります。かき続けることで、かき傷やかさぶた、さらに細菌感染による化膿を伴うこともよくあります。
乳幼児や高齢者では現れ方が違うことも
乳幼児では頭皮、顔、首、手のひら、足の裏に出ることがあり、機嫌が悪い、よく眠れないといった形で現れることもあります。高齢者や寝たきりの方はかゆみをあまり感じず、背中やお尻のかき傷や皮むけだけのこともあり、皮膚の乾燥によるかゆみと思われて対応が遅れやすくなります。
角化型疥癬:特にうつりやすい
免疫力が低下している方、寝たきりや介護が必要な方では、広い範囲が厚くなって灰白色のかさぶたやフケのようなものに覆われることがあり、角化型疥癬(ノルウェー疥癬)と呼ばれます。このはがれた皮膚には非常に多くのダニがいるため、短い接触や寝具を介してもうつりやすく、早めの受診と施設での感染対策の開始が必要です。
疥癬と湿疹・じんましん・虫刺されの違いは?
かゆい皮膚の病気は多く、疥癬は湿疹やじんましん、虫刺されと間違えられやすく、自己判断で薬を塗るとかえって典型的な見た目ではなくなることがあります。下の表は違いを大まかに理解する助けになりますが、対面での診断の代わりにはなりません。慢性的に繰り返す乾燥したかゆい発疹がある場合は、アトピー性皮膚炎の症状とケアも参考にしてください。
| 比較項目 | 疥癬 | 湿疹/アトピー性皮膚炎 | じんましん | 虫刺され |
|---|---|---|---|---|
| 主な原因 | ヒゼンダニが皮膚の表面に寄生 | 皮膚のバリア機能の低下、体質と環境の刺激 | アレルギーなどの誘因で皮膚からヒスタミンが放出される | 蚊、ノミ、ツツガムシなどによる刺咬 |
| かゆみの特徴 | 夜や熱いお風呂のあとに明らかに強くなる | 乾燥、汗、季節の変わり目に悪化 | 突然出て、数時間のうちに場所を変えて消えることが多い | 刺された場所が局所的にかゆく、多くは数日で治まる |
| よく出る部位 | 指の間、手首、腰まわり、わき、お尻、陰部 | ひじの内側、ひざの裏、顔や首、手 | 全身のどこにでも出る | 手足、すねなど露出している部分 |
| 発疹の見た目 | 小さなブツブツ、小さな水ぶくれ、細い線状のトンネル、陰部のしこり | 乾燥、皮むけ、赤み、皮膚のごわつき | 境界のはっきりした盛り上がった膨疹 | 単発または散らばった赤く腫れたブツブツ、中心に刺し口があることも |
| 家族も一緒にかゆい? | よくある。同居者に次々出る | 通常はない | うつらない | 同じ環境にいる人がみな刺されることはある |
| 経過 | 治療しないと続き、徐々に広がる | 慢性的に繰り返す | 多くは数週間以内に治まるが、繰り返すこともある | 刺される原因から離れれば徐々に良くなる |
| 対処の方向性 | 医師の診断後に処方薬で治療し、接触者も同時に対応して寝具を洗濯 | 保湿、刺激を減らし、重症度に応じて抗炎症治療 | 誘因を探し、かゆみを抑える。重い場合は救急受診 | さらに刺されないようにし、かゆみを抑え、感染に注意 |
疥癬はどう診断する?医師はどんな検査をする?
医師はまず、かゆみが出る時間帯、同居者や施設内にかゆがっている人がいるか、最近の接触歴、すでに使った塗り薬を確認し、そのうえで指の間、手首、腰まわり、陰部などの典型的な部位を丁寧に診察します。
疑わしいトンネルが見つかれば、ダーモスコピー(皮膚の拡大鏡)で拡大して観察したり、病変を軽くこすり取って顕微鏡でダニや卵、フンを探したりすることがあります。これらの検査は通常、外来で行えます。
健康な大人ではダニの数が少ないこともあるため、一度見つからなくても疥癬ではないとは言い切れません。医師は経過、発疹の分布、接触者の状況を総合して判断し、必要に応じて再診で改めて検査します。
疥癬の治療は?なぜ家族も一緒に対応するの?
疥癬は医師の確定診断のうえで処方薬を使う必要があり、現在のところ疥癬の治療薬として承認された市販薬はありません。治療方法は年齢、妊娠や授乳、皮膚の状態、角化型疥癬かどうかによって調整されます。主な方向性は次のとおりです。
- 外用の疥癬治療薬(殺ダニ作用のある塗り薬):多くの場合の中心となる治療です。指示どおり首から下、足の指先、指の間や爪の間まで塗り、乳幼児や高齢者では頭や首まで含める必要があることもあります。医師が指示した時間のあとに洗い流し、一定の間隔をあけてもう一度塗ることがよくあります。
- 内服の抗寄生虫薬:角化型疥癬、広範囲の感染、施設での集団発生、塗り薬の実施が難しい場合などに、医師が使用を検討することがあり、年齢、体重、妊娠、他の服用薬を考慮します。
- かゆみ止めとスキンケア:治療中や治療後のかゆみを和らげるため、内服の抗ヒスタミン薬や保湿ケアを組み合わせることがあります。
- 細菌感染の合併:かき壊したあとに化膿したり、赤く腫れて熱や痛みが出たりした場合は、医師が抗菌薬(抗生物質)による治療を別に検討することがあります。
同居家族、パートナー、過去2か月以内に肌の密接な接触があった人は、症状がなくても同じタイミングで一緒に治療が必要になることが多く、「自分が治ったら相手からまたうつる」というピンポン感染を防ぎます。治療が必要かどうかや使い方は、一人ひとりの状況に応じて医師が判断します。
ダニがいなくなっても、アレルギー反応によって数週間かゆみが続くことがあり、それだけで治療がうまくいかなかったとは限りません。自己判断で量を増やしたり毎日塗り直したりすると皮膚を刺激するので避けてください。数週間たってもかゆみが改善しない場合や、新しいブツブツやトンネルが出てきた場合は、再受診して追加の治療が必要か医師の評価を受けてください。
家庭ではどう掃除する?衣類と寝具の扱い方

ヒゼンダニは人の体を離れると生きられる時間が限られているため、家庭での清掃のポイントは「肌に直接触れたもの」の処理で、家じゅうに殺虫剤をまく必要はありません。治療を始める日に合わせて行うのがおすすめです。
- 治療開始前の3日以内に着た・使った衣類、タオル、シーツ、枕カバー、布団カバーを集めます。
- 熱いお湯で洗う(50°C以上で約10分間)か、洗濯後に高温の乾燥機にかけます。熱に弱い衣類はドライクリーニングに出せます。
- 靴、ぬいぐるみ、厚い布団など洗えないものは、ビニール袋に入れて密封し、少なくとも3日〜1週間置いておきます。
- マットレス、ソファ、カーペットは掃除機をかければ十分で、使用後の紙パックやダストカップはすぐに捨てるか洗います。
- 治療中はタオル、衣類、寝具を他の人と共用せず、長時間の肌の接触を避けます。
- 高齢者や寝たきりの家族を介助するときは手袋と長袖のガウンを着用し、介助後は手を洗います。
- 爪を短く切ってかき壊しを減らし、細菌感染やダニが爪の間に残る可能性を下げます。
治療後に皮膚の乾燥や皮むけが目立つ場合は、皮膚の乾燥とかゆみの原因・保湿ケアも参考に、やさしい洗浄とこまめな保湿で皮膚のバリアを整えましょう。
疥癬によくある誤解は?
誤解1:不潔な人だけが疥癬になる?
いいえ。疥癬は主に長時間の肌の接触でうつり、入浴の回数や家の片づけ具合とは直接関係がなく、誰でも感染する可能性があります。自分を責めたり隠したりするより、早めに受診し、接触者も同時に治療することが大切です。
誤解2:ステロイドの塗り薬でかゆみを止めれば大丈夫?
ステロイドの塗り薬は一時的に赤みやかゆみを和らげることがありますが、ダニを退治することはできず、発疹が典型的な見た目でなくなって診断が遅れ、その間にダニが増え続けるおそれがあります。全身に広がる、夜に強くなるかゆみは、まず医師に原因を確認してもらいましょう。
誤解3:治療後もかゆいなら、疥癬の薬を塗り続けるべき?
治療後のかゆみは、アレルギー反応がまだ治まっていないだけのこともあります。過度に繰り返し塗ると、かえって皮膚を刺激して皮膚炎を起こすことがあります。追加の治療が必要かどうかは、再診での医師の評価で決めましょう。
誤解4:家じゅうを消毒し、殺虫剤をまく必要がある?
ヒゼンダニは人の体を離れると生きられる時間が限られています。大切なのは肌に触れた衣類や寝具の洗濯と、接触者の同時治療で、通常は家全体に殺虫剤をまく必要はありません。屋外で過ごしたあとに足に赤いポツポツが出ただけなら、虫刺されによる赤い腫れとかゆみのこともあり、対処法が異なります。
皮膚科を受診する目安は?
疥癬が疑われる場合は、まず自分で市販の塗り薬を試すのではなく、受診して確認することをおすすめします。特に次のような場合は早めに受診してください。
- 夜間の強いかゆみが1週間以上続く、または同居家族やパートナーにも同じようなかゆみや赤い発疹が出てきた。
- 指の間、手首、腰まわり、陰部に小さなブツブツ、水ぶくれ、細い線状のトンネルがある。
- 乳幼児がぐずって泣く、眠れない、手のひら・足の裏・頭皮に赤い発疹がある。
- 高齢者や寝たきりの家族に、広い範囲の厚いかさぶたや皮むけが出てきた。
- かき壊したあとに赤く腫れて熱や痛みがある、化膿している、または発熱を伴う。
- 治療から2〜4週間たってもかゆみが続く、または新しいブツブツやトンネルが出てきた。
- 高齢者施設、寮、保育施設などで複数の人が同時に強いかゆみを訴えている。
指の側面に小さな水ぶくれが集まり、皮むけを繰り返す場合は汗疱(汗疱状湿疹)のこともあり、対処法が異なります。かゆみの原因を確かめたいときは、瑞安診所の皮膚科で医師が直接診察・評価します。
健康教育記事の参考文献
通常は自然には治りません。ヒゼンダニは皮膚の表面で増え続けるため、治療しないとかゆみや発疹が続いて徐々に広がり、家族にうつることもあります。疥癬が疑われる場合は、医師に診断を確認してもらってから処方薬を使い、濃厚接触者も同時に対応しましょう。
疥癬のかゆみはダニやフンに対するアレルギー反応によるもので、ダニがいなくなっても数週間かゆみが続くことがあります。医師の指示に沿ってかゆみ止めや保湿を行い、数週間たっても改善しない場合や、新しいブツブツやトンネルが出た場合は、追加の治療が必要か再受診して評価を受けてください。
必要になることがよくあります。初めて感染した人は、かゆみが出るまでの数週間にもダニを持っていて人にうつす可能性があります。そのため同居家族、パートナー、最近肌の密接な接触があった人は、症状がなくても同じタイミングで一緒に治療するよう勧められることが多く、うつし合いを減らせます。治療の要否や使い方は、個々の状況に応じて医師が判断します。
多くの場合、指示どおりに初回の治療を終え、医師の評価を受ければ仕事や学校に戻れます。角化型疥癬はうつりやすいため、より長い隔離と経過観察が必要です。学校、保育施設、介護施設には独自の規定がある場合もあるので、医師の評価と施設の感染対策の指示に従ってください。
犬や猫につくダニは、人の疥癬を起こすダニとは種類が異なります。接触によって人に一時的なかゆみや発疹が出ることはありますが、通常は人の皮膚で長く増え続けることはできません。ペットに脱毛、フケ、かゆみがあれば獣医師に診てもらい、ご自身の症状が続く場合や家族もかゆい場合は、やはり受診して確認してください。
おすすめできません。疥癬の治療には処方薬が必要で、塗る範囲、塗ったままにする時間、繰り返し治療が必要かどうかはすべて医師の指示が必要です。自己判断でかゆみ止めやステロイドの塗り薬を使うと、典型的な見た目でなくなり診断が遅れることがあります。妊娠中・授乳中の方、乳幼児、高齢者は特に、医師による薬の安全性の評価が必要です。
医師からのアドバイス:夜の強いかゆみ、家族もかゆいときはまず疥癬かどうかの確認を
疥癬、湿疹、じんましん、虫刺されはどれも強くかゆくなることがありますが、対処法は同じではありません。受診時には、かゆみが出る時間帯、同居家族や施設内にかゆがっている人がいるかを伝え、最近使った塗り薬のリストを持参すると、医師が典型的な部位を診察し、必要に応じてダーモスコピーや検体採取で確認しやすくなります。診断後は指示どおりに薬を使い、濃厚接触者も同時に対応して寝具や衣類を洗濯してください。ステロイドや出どころのわからない塗り薬を自己判断で長く使うのは避けましょう。治療方法や追加の治療が必要かどうかは、専門の医師が直接評価する必要があります。
本記事は疾患に関する健康教育情報であり、医薬品広告ではなく、特定の医薬品の推奨や販売を目的とするものではありません。診察の代わりにはならず、診断・検査・治療は医師が個別の状況に応じて評価します。
皮膚科医療チーム

曾 医師
