朝起きたら口の端が切れていて、食事や笑うときにしみる。リップクリームを塗ってしばらくはよくなるものの、また切れて、赤くなり、皮がむけ、ときには縁がじくじくして薄いかさぶたができる。「ビタミン不足」や「体に熱がこもっている」と思われがちですが、「口角炎」(angular cheilitis)かもしれません。口の端の、皮膚と口の粘膜の境目に起こる炎症で、皮膚科でよく相談される症状です。
原因は一つとは限りません。唾液で常に濡れている、口角のしわに水分がたまる、入れ歯や矯正装置、口呼吸、皮膚の乾燥やアレルギー、湿った場所で増える真菌や細菌などが関わります。誘因を見つけずに保湿だけを続けると繰り返しやすく、見た目が口唇ヘルペスや接触皮膚炎と似ていることもあるため、皮膚科医の診察で確認することをおすすめします。
ポイント:口角炎は口の端の皮膚の炎症で、赤み、ひび割れ、皮むけ、しみる痛みがよく見られ、湿っているとじくじくしたりかさぶたができたりします。唾液で濡れ続けること、口角のしわ、入れ歯や矯正装置、口呼吸、皮膚の乾燥などが関係し、真菌や細菌の感染を合併することもあり、栄養状態や慢性疾患が関わる人もいます。誘因を見つけて改善し、口角を乾いた状態に保って守ることが大切です。繰り返す、片側だけ長く治らない、ほかの症状を伴う場合は医師の診察を受け、成分のわからない塗り薬や民間療法を長く使うのは避けてください。
口角炎とは?口の端はなぜ切れるの?
口角炎は、口の端(口角)に起こる炎症性の皮膚トラブルです。口角は皮膚と口の粘膜の境目にあり、唾液、摩擦、口の中の環境の影響を受けやすい場所です。
口角が長い時間湿った状態になると、皮膚のバリアがふやけて弱くなり、赤みやひび割れが起こります。ひび割れから真菌や細菌が入り込んで増えやすくなり、炎症が長引くことがあります。
片側にも両側にも起こり、子ども、高齢者、入れ歯や矯正装置を使っている人、唇をなめる癖のある人、もともと皮膚が乾燥しやすい・敏感な人に多く見られます。
口角炎の症状は?
口角炎の現れ方は軽いものから気になるものまで様々です。よくある症状は次のとおりです:
軽い赤みと乾燥によるひび
口角に淡い赤みや皮むけが出て、大きく口を開けるとつっぱったり軽くしみたりします。かゆみやヒリヒリ感を伴う人もいます。
繰り返す切れ込みとじくじく
口角に小さな切れ込みができ、縁が湿って白っぽくなったり、かさぶたになったりします。食事、会話、あくびで引っ張られて痛み、出血することもあり、治ってもまた切れやすくなります。
感染を合併したときの様子
切れ込みの縁に黄色いかさぶた、はっきりした赤みや腫れ、じくじくした液、白い付着物が見られる場合は、細菌や真菌の感染を合併している可能性があります。口の中に白い斑点やヒリヒリ感もある場合は、口の中の状態もあわせて医師に診てもらいましょう。
口角炎の主な原因は?うつる?
口角炎は複数の要因が重なって起こることが多く、主な原因と誘因は次のとおりです:
- 唾液で常に濡れる:口角をなめる癖、寝ているときのよだれ、口呼吸や鼻づまりで、口角がいつも湿った状態になります。
- 口角のしわ:口角が下がったりしわが深くなったりすると(高齢者や体重の変化のあとに多い)、水分がたまり、こすれ合いやすくなります。
- 入れ歯や矯正装置:入れ歯が合わない、噛み合わせの高さが変わった、矯正装置をつけているといった場合、唾液が口角に集まりやすくなります。
- 真菌や細菌の感染:湿った環境ではカンジダ(真菌の一種)や黄色ブドウ球菌などの微生物が増えやすく、炎症が続きます。
- 皮膚の乾燥やアレルギー:アトピー体質、唇の乾燥、リップクリーム・歯みがき粉・うがい薬・食品成分などへの過敏が誘因になることがあります。
- 栄養や全身の状態:栄養の偏り(たとえば鉄分やビタミンB群の不足)、血糖コントロールの不良、免疫力の低下が関係する人もおり、さらに検査が必要かは医師が判断します。
口角炎そのものは、人から人へ直接うつる病気とは通常みなされませんが、感染を合併している場合は、食器・コップ・リップ用品の共用で微生物が広がる可能性があります。身の回りの物は分けて使い、感染が関わっているかどうかは医師に判断してもらいましょう。
口角炎と口唇ヘルペス・接触皮膚炎・脂漏性皮膚炎の違いは?
口の端の赤みや皮むけは原因が多く、単なる「ビタミン不足」と思われがちです。下の表はよくある違いをまとめた参考情報で、対面での診察の代わりにはなりません。口の周りに小さな水ぶくれが集まってできた場合は、口唇ヘルペスのうつり方とケアも参考にしてください。
| 比較項目 | 口角炎 | 口唇ヘルペス | 接触皮膚炎 | 脂漏性皮膚炎 |
|---|---|---|---|---|
| 主な部位 | 口角、片側または両側 | 唇の縁や口の周り | 原因物質に触れた部位 | 鼻の脇、眉間、口の周りなど皮脂の多い部位 |
| 見た目 | 赤み、ひび、皮むけ。湿るとかさぶた | 小さな水ぶくれが集まり、破れてかさぶた | 赤み、皮むけ、かゆみ、ときに小さな水ぶくれ | 脂っぽいフケ状の皮むけと赤み。広範囲のことが多い |
| よくある誘因 | 唾液、しわ、入れ歯や矯正装置、感染 | ウイルスの再活性化、疲れやストレスが関係 | リップクリーム・歯みがき粉・スキンケアなどによる刺激やアレルギー | 皮脂の分泌と皮膚の微生物のバランスの乱れ |
| 感覚 | しみる、つっぱる、口を開けると痛い | ピリピリ・熱感のあとに水ぶくれ | かゆみ、ヒリヒリ感 | 軽いかゆみ、または無症状 |
| 対応の方向性 | 誘因を探して口角を守る。医師が評価 | 診断を確認し、医師が評価 | 原因物質を探して避ける。医師が評価 | 洗浄とケア。医師が評価 |
皮膚科では口角炎をどう検査する?

診察では、口角の不調がいつからか、片側か両側か、繰り返すか、口角をなめる癖や口呼吸があるか、入れ歯や矯正装置を使っているか、最近変えたリップクリーム・歯みがき粉・スキンケア、血糖や栄養、ほかの持病について医師が尋ねます。
続いて医師は口角、周囲の皮膚、唇を観察し、必要に応じて口の中に白い斑点などの変化がないかを確認し、役立つ場合は拡大して観察します。
感染が疑われる場合は、口角の分泌物や皮膚の一部を採って真菌の顕微鏡検査や細菌培養を行うことがあります。アレルギーが疑われればパッチテスト、繰り返す場合や全身状態との関係が疑われる場合は血液検査をすすめることもあります。片側だけ長く治らないひび割れは、さらに検査が必要かどうかも評価されます。これらが必要かは医師が個々の状況に応じて判断します。
口角炎の対処は?薬は必要?
口角炎の対処は、誘因を見つけ、湿りを減らし、傷んだ皮膚を守ることが中心で、医師の診察のうえで決めます。主な方向性は次のとおりです:
- 保護と保湿:医師の指示に従い、刺激の少ない軟膏タイプの保護剤を口角に使って、唾液による濡れと摩擦を減らします。
- 誘因の改善:口角をなめる癖や口呼吸などの習慣を見直し、必要に応じて歯科医に入れ歯や矯正装置の調整が必要か確認してもらいます。
- 抗真菌の外用薬:医師が真菌感染があると判断した場合、抗真菌の外用薬が処方され、指示どおりに使います。
- 抗菌の外用薬:細菌感染を合併している場合、医師が抗菌の外用薬の使用を検討します。
- 短期間の抗炎症の外用薬:炎症が強いとき、医師が状況に応じて短期間の抗炎症の外用薬を検討します。自己判断で長く塗り続けるのはおすすめできません。
- 全身状態の確認:繰り返す場合、栄養、血糖、ほかの慢性疾患の経過観察が必要か医師が相談します。
口角炎は誘因が改善しないと繰り返しやすく、湿りや習慣に対処せずに薬だけを使っても効果が限られることがよくあります。薬を使うか、どの種類をどのくらいの期間使うかは医師の指示に従い、自己判断で異なる塗り薬を混ぜて使うのは避けましょう。
家庭でできること:口角炎のケア8つのポイント

次の習慣は、口角を乾いた状態に保ち刺激を減らすのに役立ちます。ご自身の状況に合わせて調整し、症状が強い場合や繰り返す場合は、まず受診して確認しましょう。
- 口角をなめない:なめると一時的に楽ですが、唾液が乾くとかえって乾燥して切れやすくなります。
- 食後はそっと押さえて水分をとる:清潔でやわらかいティッシュやタオルで口角を軽く押さえ、強くこすらないようにします。
- 寝る前に保護:医師の指示に従い、清潔な口角に刺激の少ない保護用の製品を塗り、寝ている間の唾液による濡れを減らします。
- 刺激の少ない唇・口の中のケア用品を選ぶ:香料やミントの強いもの、しみるリップクリーム・歯みがき粉・うがい薬は避けます。
- かさぶたや口角をはがさない・いじらない:はがすと再び切れて感染しやすくなり、色素沈着が残ることもあります。
- 入れ歯や矯正装置を清潔に:歯科医の指示に従って清掃・調整し、夜は指示どおりに外して適切に保管します。
- 身の回りの物は共用しない:コップ、食器、リップ用品、タオルは分けて使い、微生物の行き来を減らします。
- バランスのよい食事と規則正しい生活:多様な食事と十分な睡眠は皮膚全体の状態を保つのに役立ちます。サプリメントが必要かは医師に相談しましょう。
もともと皮膚のバリアが弱く乾燥やかゆみが出やすい人は、アトピー性皮膚炎のケアのポイントや乾燥によるかゆみの原因と対処も参考に、日々の保湿をあわせて行いましょう。
口角炎のよくある誤解
誤解1:口の端が切れるのはビタミン不足だから、サプリを飲めばいい?
そうとは限りません。栄養状態も要因の一つですが、唾液による濡れ、口角のしわ、入れ歯や矯正装置、感染、皮膚のアレルギーもよく見られます。誘因を改善せずにサプリを自己判断で長く摂ると、本当の原因を見つけるのが遅れることがあります。必要かどうかは医師が判断します。
誤解2:口角が乾いたらなめると潤う?
なめても一時的に湿るだけで、唾液が蒸発するときに水分も奪われ、口角が濡れやすく弱くなります。口角炎を繰り返す一般的な誘因の一つです。
誤解3:口の端に小さな水ぶくれができても口角炎?
そうとは限りません。口角炎は主にひび割れとじくじくです。口角や唇の縁に小さな水ぶくれが集まっている場合は、ヘルペスウイルスによる口唇ヘルペスの可能性があり、対応が異なります。口唇ヘルペスがうつりやすい時期と受診の目安も参考に、医師に直接確認してもらいましょう。
受診の目安は?
口の端のひび割れや腫れが、ちょっとした乾燥による切れを超えている場合は、まず皮膚科医に原因を確認してもらいましょう。次のような場合も、早めの受診や再診をおすすめします:
- 繰り返す、またはしばらく自分でケアしても改善しない。
- 片側だけに起こり、なかなか治らない、縁が硬くなる、または形が不規則になった。
- 切れ込みに黄色いかさぶた、はっきりした赤みや腫れ、じくじくした液、痛みの悪化が出てきた。
- 口の中に白い斑点やヒリヒリ感がある、または飲み込むときに違和感がある。
- のどの渇き、だるさ、体重の変化、そのほかの全身症状を伴う。
- 新しいリップクリーム、歯みがき粉、スキンケアが原因ではと疑う場合は、接触皮膚炎の原因とケアも参考に、医師に評価してもらいましょう。
口の端は脂漏性皮膚炎や乾燥による皮膚トラブルと一緒に出ることも多いため、脂漏性皮膚炎の症状とケアも参考にしてください。口の端の赤みやひび割れの原因を確かめたいときは、瑞安クリニック皮膚科で医師の診察を受けられます。ほかの皮膚のテーマは健康情報でもご覧いただけます。
健康教育記事の参考文献
- DermNet:Angular cheilitis
- 米国国立生物工学情報センター StatPearls:Angular Cheilitis
- 英国プライマリケア皮膚科学会(PCDS):Angular cheilitis
口角炎そのものは、人から人へ直接うつる病気とは通常みなされませんが、真菌や細菌の感染を合併している場合は、食器、コップ、リップ用品の共用で微生物が広がる可能性があります。身の回りの物は分けて使い、感染が関わっているかは医師に判断してもらいましょう。
そうとは限りません。栄養状態も要因の一つですが、唾液による濡れ、口角のしわ、入れ歯や矯正装置、感染、皮膚の乾燥やアレルギーもよく見られます。血液検査や栄養面の対応が必要かは、医師が状況に応じて判断します。
よくある理由は誘因が改善していないことで、口角をなめる癖、口呼吸、入れ歯や矯正装置が合わない、口角のしわに水分がたまる、皮膚の乾燥やアレルギーなどがあります。誘因に対処せず薬だけ使うと繰り返しやすいため、医師に原因を探してもらいましょう。
口角炎は主に口角の赤み、ひび割れ、じくじくです。口唇ヘルペスは多くの場合ピリピリ・熱感から始まり、小さな水ぶくれが集まってかさぶたになり、唇の縁や口の周りに出ます。見た目が似ることもあり、写真だけでは見分けにくいため、医師の診察を受けましょう。
軽い乾燥によるひびなら、まず保湿と保護を行い、口角をなめないようにします。ただ、成分のわからない塗り薬を長く使うと診断が遅れたり皮膚を刺激したりすることがあります。繰り返す、または治らない場合は受診し、薬を使うか、どの種類かは医師が決めます。
しばらく自分でケアしても改善しない、繰り返す、片側だけ治らない、黄色いかさぶたやじくじくした液が出る、口の中に白い斑点がある場合は、早めに皮膚科医の診察を受け、必要に応じてさらに検査を受けましょう。
医師からのひとこと:口の端が繰り返し切れるときは、原因を確かめてから対処を
口の端のひび割れ、赤み、皮むけは、口角炎のこともあれば、口唇ヘルペス、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、そのほか別の対応が必要な問題のこともあります。受診時には、口角の不調がいつからか、繰り返すか、口角をなめる癖や口呼吸があるか、入れ歯や矯正装置の有無、最近変えたリップクリーム・歯みがき粉・スキンケア、持病を伝えてください。医師が診察して判断します。成分のわからない塗り薬や民間療法を長く使うのは避け、検査や薬が必要か、どの種類をどのくらい使うかは医師の診察で決めましょう。
本記事は病気に関する健康教育情報であり、医薬品の広告ではなく、特定の医薬品を推奨・販売するものではありません。医師の診察に代わるものではなく、診断・検査・治療は個々の状況に応じて医師が直接判断します。
皮膚科医師チーム

曾 医師
